立憲的意味の憲法とは、立憲主義に基づいて定められた国家の基礎法をいう。立憲主義というのは、誰かひとりの考えで勝手に物事を決めるような力、つまり国家権力を制限して、国民の権利を保障する、という考え方、思想のことである。
今でこそ国民の権利、人権の保障なんて当たり前に存在するものだと思ってしまうが、かつては国王に権力が集中して、国王がその権力を自由に行使できる時代があった。
そうすると、個人の人権なんてものはないに等しく、国王のさじ加減ひとつで、自由、生命、財産が奪われてしまうなんてこともしばしばあったわけである。こうした絶対君主制に対し、「個人の自由、権利を保護しよう」とする動きの中で立憲主義は生まれたのだ。
立憲的意味の憲法の成り立ち
では、どのようにして今のような立憲主義が確立されていったのか。これは中世のイギリスにまでさかのぼる。さきほど述べたように、中世には絶対君主制というものがあり、国王の権威があらゆる権力に優先していた。
しかし、そのような国王といえども従わなければならない高次(次元が高いこと)の法があると考えられ、これを根本法や基本法と呼び、この考え方が近代立憲主義へと引き継がれていったのである。「国王は何人の下にあるべきではない。しかし神と法の下にあるべきである」というプラクトンの言葉がまさにこのことを表している。
ここでいう「法」とは誰かが作った法律ではなく、それを超越した人間の自然の本性や理性に基づいて、あらゆる時代や場所に関係なく妥当し(普遍性)、人の意思で変更されない(不変性)、道理に従って認識されうる(合理性)法のことをいう。このような自然本来の原則、法則である法を総称して、自然法と呼ぶ。
さらにこの自然法を基礎に、人間は生まれながにして自由かつ平等であり、生まれながらにしてその権利(自然権)をもっている、という考えが生まれる。そして、国家はあくまでもそうした人々の合意形成と契約によって生み出されたものであるから、政府が権力を自分勝手に行使しようとした場合、国民は政府に抵抗する権利をもっている、というロックやルソーの思想に支えられ、立憲主義が確立されていった。そこから、アメリカ合衆国憲法、フランス人権宣言などが生まれていくことになる。
立憲的憲法の形式と性質
立憲的意味の憲法は、その形式の面で成文法(きちんと文字にして書かれていること)であることが普通だ。どうしてかというと、それは先述したように、ロックやルソーが説いた社会契約(国家が組織されたのは、自然権を持つ人々の合意形成によってされた契約であるという考え方)を具体化した根本契約というのが憲法なのだから、契約である以上それは文書の形にする必要があるよね、ということなのである。いってしまえば、立憲的意味の憲法は、国家と国民の契約書にあたるわけだ。
次に立憲的意味の憲法は硬性憲法であることが普通である。硬性、というのは硬い性質のことをいうが、立憲的意味の憲法は、改正する手続きが通常の法律に比べ困難であるため、このように呼ばれている。これも、憲法は社会契約を具体化する根本契約であり、国民の自然権を保障するものであるから、そう簡単に変えることはできないですよ、ということなのである。
日本国憲法も硬性憲法で、そもそも改正を発議(改正したい、と提案すること)するのに単純な多数決でなく、特別な多数決を必要とし、さらに改正するかどうかは国民投票によって過半数の賛成を必要としている。
まとめ
というわけで今回は立憲的意味の憲法の特色について解説してみた。
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